「彼女が居るのは残念だけど、眺める分にはいいよね♪何て言うの?彼氏って言うよりもアイドル見てるみたいで♪
でも堤内は本気っぽいし、ざまあみろって感じだけど。
だから尚更文化祭では負けられない!」
岩田さんは意地悪そうに笑った。
岩田さんの………劣等感の裏にあるのは―――いや、そもそも隠すつもりなんてないんだろう。
打ち負かしてやりたいという、闘争心。
「あたし嫌いじゃないよ?岩田さんの、そうゆう考え。がんばろうね」
硝子のお皿を返すと、岩田さんは笑った。
「鬼頭さんてもっとツンツンしてる人だと思ってたけど、意外に喋りやすい♪うん、がんばろ☆」
岩田さんは笑顔を振りまいて、女子たちの輪に戻っていった。
ちょうど試食のケーキを食べ終わったのか、梶が女子の輪から抜け出てきた。
「鬼頭、もうそろそろ解散っぽいけど、今日も一緒に帰る?いや、一緒に帰ろうぜ!」
と梶は強引。
「いいよ」
と短く返事を返して、あたしはキョロキョロと辺りを見渡した。
久米―――まだ戻ってない…
「久米ならさっき電話しに教室を出て行ったぜ?何かえらく真剣な顔つきだった。あとを尾けようと思ったけど、何か警戒してるっぽかったし…」
「真剣な顔つき?警戒?」
「また何か企んでるのかな」
そんなことをひそひそと喋っている最中だった。
久米がちょっと沈んだような…そして少しだけ緊張を帯びた表情で戻ってきた。
机の上に置いた鞄を取り上げて、あたしたちの元へ慌てて来る。
「ごめん、鬼頭さん。俺、急用が出来たんだ。今日は送っていけないから、梶田にお願いしていい?」
いや、頼んでないし。
てか約束もしてないし。
それでもあたしは何も否定はせずに
「分かったよ」と
短く答えた。



