HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



教室に帰ると、まだ賑やかだった。


いつの間にか女子たちも合流して、調理室で作ったというりんごケーキとアップルパイの試作品を男子たちがつまんでいた。


「鬼頭も食ってみろよ。旨いぜ~♪」


梶はケーキの欠片を口に運びながら、ご機嫌。


ちょっと前に「腹減った~」なんて喚いていたから、お腹に食べ物入れて満足そうだ。子供みたい。


「梶くぅん、あたしの作ったアップルパイも食べてぇ」


なんて女子が甘い声を出して、梶の傍をうろうろ。


こうゆうのって久米だったら、すぐ囲まれそうなのに―――当の本人の姿は見つからなかった。


机を見ると鞄が置きっぱなしになってるから帰ったわけではなさそう。


ガラッ


教室のドアが開く音がして顔を上げると、久米ではなかった。


少しだけ沈んだように顔を俯けて、水月が入ってくる。


だけどすぐに女子たちに囲まれ、


「せんせ~♪試作品作ったの♪食べて??」


なんて、ケーキやパイを差し出されると、甘い香りに表情を緩めていた。


「鬼頭さんはどっちがいい?」


急に女子の一人に、にこにこ聞かれて、小さなお皿に乗ったケーキとパイを出された。


普段あまり喋らない、ギャルっぽい子。名前を確か…岩田さんとか言ったな。


「ってか鬼頭さんて甘いもの食べるの?」


「普通に好きだよ」


「そ~なの??何か意外~」


岩田さんは何が面白いのか、ふわふわと笑った。


あたしは岩田さんに勧められるまま、ケーキとアップルパイを手に取り、交互に口に入れ、


「あ、おいしいよ。イケるんじゃない??」


そう返事を返すと、岩田さんは満足そうに笑った。