白雪姫は自分を殺そうとする猟師を誘惑することになっている。


元々の台詞はあるけど、それをどう演じる?


色目を使って猟師を誘惑する?それとも必死に泣き真似でもした方がいいかしら。


そんなことを短い間で考えていると、


ガラっ…


出し抜けに教室の扉が開いた。


全員が一斉に音のした方へ振り返り、登場した水月がびっくりしたように目を丸める。


「ど…どうした?何かトラブル?」


と心配そうに近くの男子に声を掛け、その男子は、


「演劇の練習っすよ。鬼頭と久米が」と面白そうに答えた。


水月がこちらを向いて、猟師役の久米と向き合っているあたしを見つめてきた。



水月―――……




―――あたしだったら…




あたしは久米の首元に手を這わせた。


久米がびっくりして目を開きながらあたしを凝視する。


水月がこっちをじっと見つめているのが分かり、あたしは口を開いた。


あたしは久米を挑発するように、そのガラスのような瞳をじっと見据えて口の端を僅かに吊り上げた。





『あなたはそれでいいの?あの性悪オンナに一生コキ使われて、永遠にお城の中



逃げてばかりじゃ




幸せなんて掴めないわ?』