「OK。話は早いじゃん。早速台詞合わせしてみる?台本見ながらでいいから」


あたしは台本を放り投げて、


「一回見たから台詞は覚えた。どうせやるなら動作付きでやった方がいいんじゃない?」


あたしが挑発的に笑うと久米はびっくりしたように目をまばたき、あたしと台本を見比べ、


梶は「マジかよ…一回だけで…?」と驚いていた。


「分かったよ。じゃあどのシーンがいい?」


久米が苦笑いであたしを見てきて、あたしはちょっと考えた。


「そうだね。猟師を誘惑して脅すシーンとか結構好きかも。それで行こうよ」


「了解。猟師役は……」久米が台本に視線を落として、


「早川だよ。でも早川は部活に行ってるからあんたやってよ」


あたしが久米を目で指し示すと、久米はちょっとびっくりしたように目を丸めて、


「俺??」と聞いた。


「そ。仮にも演劇部員だし、慣れてるでしょ」


「俺は大道具係りだよ。舞台に立ったことは一度もない」


それを聞いて、あたしはちょっと意外な感じがした。


だっていかにも観客受けしそうなルックスだし、この華やかな雰囲気だったらさぞ舞台映えしそうなのに。


あたしの疑問をよそに、久米はマイペースに


「猟師が森に白雪姫を連れ出して、花を摘んでいる白雪姫の背後からナイフを手に迫るところからでどう?とりあえずナイフに―――」


キョロキョロとあたりを見渡し、


「これなんかどう?」


なんて言って梶は勝手にあたしのペンケース渡してるし。


「ちょうどいいね。鬼頭さん、大丈夫?」


久米に聞かれて、あたしは腕を組みながら、ふんっと答えた。