台本をぱらぱらめくってストーリーを頭の中で読む。


久米の作った『白雪姫』は、既存の白雪姫とは少し違っていた。


おおまかなストーリーの流れは普通だったけど、ヒロインの白雪姫は可愛いくて、しとやかで、心優しくて……なんて性格ではない。


久米の書く白雪姫は美しいだけでなく、頭が良くて、図太く、そして小ズルイ性格をしている。


美しい白雪姫は女王さまの怒りをかって森に猟師に連れて行かれる場面でも、彼女は命乞いをせず、猟師を誘惑しようとする。


「……なにこれ、超おもしろいじゃん」


思わず呟くと、


「君のイメージにぴったりだろ?」と久米は得意げ。


同じように台本を手渡された梶までも「ホントだ!まんま鬼頭じゃん!♪」と笑い声を上げた。


「イメージぴったりって、あんたはあたしをこうゆう目で見てるっての?」


思わず睨んだが、久米はちっとも堪えていない。


それでもやっぱり大人しく守られてるお姫様って性分じゃないし、この方が演じやすいのかも。


さらに森で白雪姫を拾ってくれた7人の小人を召使いのようにこき使い、でも彼らは白雪姫の美しさに骨抜きになって使われるまま。


魔女に扮した女王さまにりんごをもらっても、白雪姫は疑いの目でそのりんごを食べなかった。


怒った魔女が無理やり食べさせるという始末。


結局魔女にりんごを食べさせられて、白雪姫は眠りに入る。


「そこは君の意見をもとにしたんだ。なかなか参考になったよ」


久米が笑って、「ああ、この間の…」あたしは頷いた。


パラパラとめくって進めていって、あたしはあるワンシーンで目を剥いた。





「ちょっと!何これ!!王子さまとのキスシーンがあるじゃん!」





あたしは今度こそ本気で怒ると、梶も「マジかよ!王子さまって久米のことだろ!?てめっ!鬼頭とキスするんかよ!!」


と違った意味で怒り狂っている。


「白雪姫って言ったらそうじゃない?王子様のキスで白雪姫が目を覚ますんだ」


久米がさも当たり前のように言って、あたしは台本を引き裂きたくなるほどの衝動を抑え、席を立ち上がった。