キーンコーン…
鐘が鳴り、教室に入ると相変わらず教室内は煩いほどにぎやかだった。
今日の話題はもっぱらA組と文化祭の出し物がかぶったことで、生徒たちはみんないきいたっている。
「静かに。出席を取るよ」
名簿を開いて名前を読み上げる間も、方々でひそひそと噂話が聞こえてくる。
僕はそれを聞かない振りで名前を読み上げた。
「赤井」
「は~い」
「安部」
「うっす」
名前を呼ばれた生徒たちが返事をしながら各々手を上げる。いつのも光景だ。
だけどいつもよりピリピリと緊張が伝わってくる。
―――………
「…梶田」
「…はい」
梶田は面白くなさそうに窓の外を見ていたし、
それでも雅はいつもと変わらないテンションで、無表情に頬杖をついていた。
「鬼頭」
名前を呼ぶと、
「はい」
と控えめな、それでいて透き通るような声で返事が返ってきた。
いつもどおり…何も変わらない。
だけど―――
何で委員会議であったこと、僕に言ってくれなかった?
仮にも僕は雅の担任でもあるし、彼氏だ。聞く権利はあると思う。
それとも―――僕に要らない心配をさせないため、雅には彼女なりの気遣いがあったのか。
雅が何を考えているのかさっぱりだ。
たまに
僕は彼女との間に距離を感じることがある。
その距離は、以前よりだいぶ縮まったように思えるが、時々……永遠にそれは僕が近づけない距離だと―――
感じることがある。
それが少しだけ悲しいんだ。



