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「僕もはっきりとは知らないですけど、昨日の実行委員会議で派手にやりあったらしいですよ?A組とD組」


それぞれのクラスに向かう途中、和田先生が僕にこそっと教えてくれた。


派手にやりあった?雅からはそんなこと一言も聞いていない…


『実行委員会議どうだった?』と電話で聞くと、


『別にふつー』と言う答えが返ってくるだけで、これと言ったことは話さなかった。


「まぁD組も血の気の多い生徒たちが集まってますからね~。あ、でも僕はD組の生徒がアイデアを盗んだとは思いませんよ?」


と和田先生が慌てて手を振る。


「でも演劇とカフェの二部構成ってなかなか思い立たないですよね。D組の生徒じゃなかったら逆じゃないですか?」


と和田先生がこそっと耳打ちしてきて、僕は目を上げた。


「逆……?」


「だからA組の生徒がD組のアイデアを盗んだってことですよ」


「まさか……」


僕は目を開いたが、


「まぁあくまで可能性ですけど」と和田先生はのんびりと答える。


「それにしても石原先生もあそこまで言わなくてもいいじゃないですかね。石原先生、ひがんでるんですよ。2学年の数学の授業、神代先生の方が人気で楽しそうだから。


石原先生は厳しい人ですからねぇ。生徒にもあまり人気がないみたいだし」


と和田先生は苦笑い。


僕も曖昧に笑みを返した。


石原先生は―――確かに生徒に対して厳しい教諭ではあるけど、酷いえこ贔屓がある人ではないし、常に冷静で貫禄もある。


例え方向は違っても、目指すところは一緒だった。だから僕も尊敬の念を抱いていたのに―――






僕の生徒のことを馬鹿にしたあの態度は―――どうしても許せない。