「あれ……?」
畳もうとしていた折り畳みの鏡を見て、乃亜が首をかしげた。
「どうしたの?」
「ううん。さっきちらっと―――久米…くん?の姿が映った気がしたんだけど」
「久米?あいつすぐに帰ったじゃん。委員が決まって満足そうに。見間違いじゃないの?」
思い出すだけで腹が立つ。
「…うん。そーだよね」
それでも乃亜はどこか納得していない様子で、首を傾げてる。
それでも
「保健室、行くの?行かないの?」
あたしが急かすと、「行く行く~」と慌てて鏡を仕舞い入れた。
――――
――
保健室をノックもせずに開けると、林 誠人はこちらに背を向けデスクに向かってパソコン作業をしていた。
「ま・こ・せんせ♪」
背後から声を掛けると、
保健医はあからさまな不機嫌顔でこちらを振り向いた。
「何だよ、またお前らかよ。俺は忙しいの。お子ちゃまに構ってる余裕はねぇ」
そう言ってまたパソコンに向かう。
直線的なフレームのいかにもインテリっていう風情のメガネのブリッジを、苛々した手付きで直すと、
「ああ!くそっ!!またフリーズしやがった!」
機嫌悪そうに声を荒げた。



