HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



まるで勇敢なナイトたちに護られるお姫様じゃなく、本当は売女(バイタ)だ、と―――森本さんの目は言外に含ませている。


「はぁ!?あいつらのクダラナイ噂話をお前は信じるのかよ!」


と梶が声を荒げた。


「梶、良いって。あくまで噂だしそのうち治まるよ」


あたしが梶を止める。


「でも…火のないところに煙は立たないって言うじゃない。もし本当に噂だけなら、鬼頭さんの行動にも問題があるんじゃない?」


「問題?」


と今度は久米が森本さんに聞いた。


「…き。鬼頭さんやたら神代先生と仲良さそうだし、その辺から噂が昇ってるんだと思う。気をつけた方がいいよ」


森本さんは早口に言って、定期券を握り締めるとさっと改札を通っていった。


あたしはまるで逃げるように走り去る森本さんの背中を無言で見送った。


「何だよあれ!」と梶も同じように森本さんを見て…だけどこっちはあからさまに睨んでいる。


久米は肩をすくめて苦笑い。


「森本さんは神代先生に気があるのかな?鬼頭さんに妬きもちやいてるんだよ、きっと」


気がある?妬きもち?


「絶対そうに決まってる!神代に相手にされないからひがんでんだよ!」


と梶。


そう言えば乃亜もそんなこと言ってた気が……


でも違うと思うけど…


何て言ったって、あの潔癖の森本さんだよ?教師と噂があるあたしにあんな風に怒るんだから、そうゆうの一番許せないんじゃないかな。


単にお勉強のストレスからあたしに当たってるだけでしょ。


水月から聞いたけど、あそこ家庭内ごたごたしてそうだし。





ただそれだけじゃない?