梶がぐっと息を呑む。
気の強い女が勝ち誇ったように口元を歪めた。
「ほらね。パクったなんて言いがかりつけて、盗んだのはそっちでしょ?あたしたちは綿密に話し合って決めたの」
あたしは肩をすくめた。
下駄箱に追いやられていた根岸が一瞬だけびくりと肩を震わせて、あたしは目を細めた。
根岸はあたしの視線から逃れるように顔を青くさせ、慌てて逸らす。
「行こう、梶。あたしたちは球技場を使えることになったし、ここで言い合いしてても埒が明かないよ」
そう言って梶の手を取ると、それでも納得がいってないのか梶は不服そうに唇を尖らせた。
久米は無言でA組の連中に背を向け、森本さんはおどおどしたように久米の後を追う。
あたしと梶も背を向けたとき、
「また教師の誰かとヤって点数稼ぐ気かよ。そうは行かないぜ」
男子があたしの背中に向かって吐き出した言葉に、あたしはぴたりと足を止めた。
梶も止まり、ついでに前を歩き出した久米が無表情にこちらを振り返り、森本さんはびっくりしたように目を丸めて振り返った。
あたしも無言で振り返ると、男子は口の端を吊り上げて下卑た笑みを浮かべている。
周りにいる女子たちも同じような表情だ。
「噂になってるぜ?あんた色んな教師とヤりまくって、成績上げてもらってるとか」
「てめぇ!!ふざけんじゃねぇ!!」
今度こそ梶がキレて、男子の胸ぐらを掴んだ。
大声で怒鳴って拳を振りかざす。
「梶!」
あたしは男子の顔を直撃する前の梶の腕を、何とか止めた。



