「あたしも同感」
そう言って久米にちょっと笑いかけると、
「もはやA組が俺たちの案をパクったのは間違いようのない事実」
言葉の割には穏やかに、久米はあたしに微笑みを返してきた。
「規模や信用度では負けるから体育館を取るのは無理」
「その点球技場は穴場だからね。
ゲキ部で演じたこともあるけど、あそこは体育館と違って声が響きやすい。迫力のあるものが仕上がると思うよ?
大きい花火を打ち上げてやろうよ」
あたしと久米が交互に会話を交わしているのを、呆然と梶と森本さんが眺めていた。
「分かりました。2-Dの球技場使用を認めます」
議長の言葉に、あたしと久米はハイタッチ。
思えば久米と意見が合うことなんてはじめてだ。
大抵久米はいつもあたしに構ってくるけど、あたしはそんな久米が鬱陶しいとさえ思っていた。
だけど少しだけ―――あんたを見直したよ。
――――
――
委員会議を終えて、あたしたちは四人揃って昇降口に向かった。
「でもよぉ。A組より凄い劇を作るって無理がないか?いくら久米の演劇部のセットや衣装を借りれるからってさぁ」
「そうよ。一体どこからそんな自信が来るのか…」
森本さんは呆れている。
「一番大切なのはクラスの団結だよ。幸いにもその点ではA組に勝ってると思うけど?」
久米がのんびりと言い、あたしもその横で制服のポケットに手を突っ込みながら口元に笑みを浮かべた。
「久米の言う通りだよ。A組は問題がありそうだよ?」
昇降口の方を目で指し示すと、丁度A組の連中が帰るところだった。
「根岸!あんたがしっかり申請しないから、D組をやりこめなかったじゃない!!」
さっきの気の強そうな女子の声が聞こえてきて、久米は苦笑を漏らし、梶と森本さんは驚いたように顔を見合わせた。



