…「3-Iのクラスは浴衣甘味喫茶を開く予定です。場所は3-Dの教室を使用します」


三年の最後のクラスの報告が終わり、二年のA組の代表がおずおずと立ち上がった。


背の低い男子で、黒縁メガネをかけたいかにも気弱そうなガリ勉タイプ。


委員会も代表も無理やり押し付けらた感がひしひしと湧き出てる。


その気弱そうな細い背中を震わせて、手に握った白い紙を必死に朗読する。





「…ぼ、僕たちのクラスは…マ、マーメイドカフェと…体育館での、え…演劇です。演劇内容は……“リトルマーメイド”」



――――!


小さな声でぼそぼそ報告して、その男子は慌てて席に座った。


すぐ右隣に座った梶が目を開いて固まっている。


左隣に座った久米でさえも、その男子が座っている方を見つめて止まったままだ。


「どうゆうことだよ!うちと同じ趣向じゃねぇか!」


梶が小声で抗議してあたしの方を見た。


「あたしに言われても知らないよ」


「……やられたな。このアイデアはどこもやってないことだから注目を浴びること間違いなかったのに」


と久米も珍しく悔しそうにテーブルの上で拳を握っている。


「A組と対抗するなんて無理だよ」


と森本さんはいつになく気弱だ。


あたしはA組の方をじっと見据えた。


あの報告した男子の細い背中を見つめていると、その男子がおずおずと振り返った。


あたしと露骨に目が合うと、慌てて視線を外す。


「はい」


あたしは挙手して席を立ち上がった。


梶や久米をはじめとする―――教室中の委員たちがあたしを注目した。