「前のも好きだったけど、それも結構好き。なんか甘い感じだよね」


「エロ保健医には、辛口のお前には似合わねぇって言われた。あいつ、千夏さんと結婚決まったら丸くなると思いきや毒舌に益々拍車がかかったよ」


憎たらしいほど長い脚を組んで、そういい切ったあの保健医の顔を思い出し、あたしは顔をゆがめた。


「何だかんだ言ってあんたたち仲いいじゃん。あたしが妬くほど」


乃亜が意味深に笑う。


「やめてよね。あいつと唯一関係があるとしたら、それは無関係」


「それ、日本語おかしいから」


乃亜が苦笑を漏らす。


うそ―――……ホントは友達。あたしの数少ない心を許せる―――友。


最初は大嫌いだったけど、あいつのこと知って、辛いときはいつも助けてくれて、逆にあいつが困ってるときは助けたいと思って―――


―――大切なものを共有した。


ううん、今もこれからもきっと……ずっとずっと共有し合う仲だ。


「あたし、保健室行ってくる。保健医を苛めたくなった」


「喧嘩したくなった。でしょ?あたしも行く~」


乃亜はグロスだとかビューラーだとかをポーチに仕舞い入れた。


「乃亜はこれから明良兄とデートでしょ?」


明良ってのはあたしのお兄ちゃんみたいな幼馴染。一年前には色々あたしの助けになってくれた本当のお兄ちゃんみたいな人。


今は血の繋がらない妹の乃亜と付き合ってる。


「ちょっとぐらい遅れたっていいよ。今日は明良のアパートでお泊りだし♪」


ご機嫌に言って乃亜は鏡をしまおうとした。


あっそ。


一時期明良兄の浮気騒動という騒ぎがあったにも関わらず、今は二人ラブラブなようで結構。


みんな平和だな。