結局、これと言って収穫はなかった。


久米が一体何を考えているのか、何をしようとしているのか―――分からずじまいだ。


消化不良の疑問だけが残って、僕の心の中をもやもやと何かがくすぶっている。


ただ……久米父子の関係は、森本母娘の仲より良好なようだ。


思春期の子供たちの心や性格に大きく影響するのは、やはり家庭環境だ。


そう言った意味で、久米は良い環境で育っていると言っていいだろう。


―――そう言えば…雅のご両親は二人とも、アメリカの大学で教鞭を執っているとか。


『小さな州立大学の教授で、父親は理工学と、母親は日本語の授業をそれぞれ受け持ってるの。


こっちの国公立の大学で教授をやってて、何年か前に向こうに異動になったって。こっちの企業と、そのアメリカの大学で何か合同の研究開発するって引き抜かれたって言ってたよ。


あたしは詳しく知らないけど、給料はいいみたい』


と、以前笑って言っていたっけ。


それにしても―――州立とは言え、向こうの大学で教授に抜擢されるとは、彼女の両親も相当頭が良いに違いない。


秀才一家と言うわけだ。


雅はそんな家庭で育ったわけだ。ご両親の高いIQを受け継いだと言うわけだから、なるほど頭が良いのが頷ける。


サラリーマンを父に、専業主婦の母親、姉は―――…ちょっといい加減な性格だけど、いたって平凡な家庭で育った僕とはまるで正反対。


ちなみに僕の家で父は、やはり母親に頭が上がらない。


姉さんも強いし―――女人天下と言うわけだ。


このまま行けば―――…僕も父と同じ道を辿りそうだけど…




だけどそれはそれでいいのかもね。