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「冗談じゃないっつの!」
バンっ!
あたしはまとめたノートを机の上に叩き付けた。
ホームルームを終えた教室では生徒たちは早々に帰っていって、今は乃亜と二人きり。
その乃亜は鏡を見ながら念入りにグロスを塗っていた。
から揚げどころじゃない。
買い物だって行く気が失せた。今日は親子丼に変更だ。
水月があんまり丼ものが好きじゃないことを知ってるから、わざとだけど。
「まぁまぁ決まっちゃったものはしょうがないじゃん」
のんびり言って、乃亜はビューラーを睫に当てている。
実はあの後、久米と梶が挙手した途端、クラスの女子たちが名乗り出た。
「久米くんと梶くんがやるんならあたしも!」なんて方々から声が上がった。
やりたいやつがやればいいじゃん。
そんな風に思ってたけど、逆に名乗り出てくる人数が多すぎて決まらなさそうだったため、最初のメンバーになったってわけ。
「でもあの森本さんが一緒かぁ。雅、あたし応援するね」
ガッツポーズを作りながら、「あんな冴えない女に神代先生盗られないようにね」と勢い込んだ。
そうだった…森本さんも一緒だっけ。
何か大丈夫なの?そのメンバーって…
まぁ梶が居るだけましかな。
怒ってもしょうがない。あたしは肩に入った力を落とすと、向かいでせっせとメイク直しに励んでいる乃亜を眺めた。
普通にしててもかなり可愛い乃亜はメイクをすると、さらに美少女度が増す。
元気になった乃亜に言い寄る男も少なくない。
その乃亜が最後にふわふわした髪をちょっと直しながら、
「雅の新しい香水いい香りだね」と話題を変えた。



