「俺も好きだな。気の強い女」
梶は話題を逸らそうと必死だ。
「楠さんは気が強そうには見えないけど?」
「そう思うだろ?だけど結構…いや、あれでいて芯は鬼頭より怖いんだぜ?」
梶が笑うと(ってかこれは本心だろう)、久米も打ち解けたように笑った。
「鬼頭より怖いって何よ。全部聞こえてるよ」乃亜は腕を組んで、声を低めると梶の方をちょっと睨んだ。
「でもまぁ女性の方が強いほうがいいんじゃない?梶田は意外に亭主関白?尻に敷かれてるほうがあってる気がするけど」
「何だよ、尻に敷かれてるって、どんなイメージだよ」
と梶がちょっとだけ怒ると、久米は「冗談だ」と爽やかに笑った。
「まぁ亭主関白ってほどじゃないけど、やっぱ男としては頼られたいしリードもしたいよな」
「何となく分かる。でも俺は結構受身だからそれで女の子にフられることが多いんだ」
「久米が?お前でもフられることあるの?」
「そりゃ…まぁ。って言うか梶田は俺を何だと思ってるんだよ」
二人は結構普通に喋ってる。女同士と違って男同士ってのは随分さくさくしてるもんだ。
特に梶は人懐っこいし、誰とでもすぐに仲良くなれるからなぁ。今回梶にいってもらったのは適任だったかも。
「まぁお前は肉食って言うより草食系だよな」
「どうなんだろ。実際今まで付き合ったのは一人だし、その子とも結局一ヶ月でダメになっちゃったしね」
「え?一人??意外~……って、お前もしかして……未経験…?」
何聞いてるんだよ、梶のヤツ。そんなこと答えるわけないだろ。って言うかそんな情報必要ないよ。
呆れてあたしは今度こそ机に突っ伏した。



