「あ、久米。今いい…?」
雑誌か何かを広げている久米に向かって、梶がおずおずと声を掛けている。
久米は今、少し離れた他の男子の席で一人で座っていた。だからちょっと集中して会話を聞かなきゃならない。耳をそばだてていると、
「いいけど、何?」久米の声が聞こえてきた。
「あ、あのさっ。お前どーゆう女がタイプ?」
梶が切り出して、あたしと乃亜は顔を見合わせ二人して同じタイミングで肩をすくめた。
「梶には期待できなさそう」
あたしは小声で乃亜を見ると、乃亜も頷いた。
「どうゆうって…いきなりだな。どうして?」と久米は不審そう…ってか不思議そう。
「…い、いや…あのさっ合コン…。そう!合コンあってさ!お前来ないかな~って」
「合コン?でも梶田って楠さんと付き合ってるんじゃないの?」
久米がちらりとこっちを見てきたので、あたしたちは慌てて顔を逸らした。
付き合ってるなんてこと、もちろんない。でもそうゆう設定だから。
「梶くんのバカっ。もっとうまくできないの?」乃亜が顔をしかめる。
「しょうがないよ。だって梶だもん」
「…あ、そーだったって…、そ、そう!乃亜ちゃんの友達が合コン開きたいって!それでさっ」
梶は慌てて取り繕っている。
「ふーん」久米は乗り気じゃなさそうだった。
「そうゆうのって苦手」なんて言って気のない様子で雑誌をめくっている。
「あ、き、鬼頭も来るよ!」
梶の言葉に久米の手が止まった。



