「交換日記?」
あたしが乃亜にUSBを渡すと、乃亜は怪訝そうに眉を寄せた。昨日あたしが水月宛に書いたメールもここに入ってる。
(但し、水月宛とは分からないようにしておいたけど。こんなの二人に知れたら恥ずかしすぎて、それだけで死ぬっての)
「日記って言うわけじゃないけどね。情報交換。このデータを三人で回すの」
「意味分からねぇんだけど」と、梶は小難しい顔で首を捻った。
あたしは乃亜からUSBメモリを取り上げると、二人の目の前をちらつかせた。
「どんな小さなことでもいい。気付いたこと分かったことがあったらここに書き込んでいくの。
誰でも見られるネットとかのブログはもちろん使えないし、ケータイも危険。
なんて言ってもストーカーの野郎はあたしのアドレスを調べ上げたぐらいだから。
案外アナログなところが落とし穴なんだよ」
あたしはちょっと笑った。
「なるほど。三人の間だけを行き来していれば情報が洩れることもないもんね」
乃亜がすぐに理解を示してくれて、でもちょっとだけ眉を寄せた。
「でも万が一誰かに何かあったとき、そのUSBがその人の手元にあったら?」と懸念されていたことを質問される。
あたしはちょっと肩を竦めて、
「そんなときの為に常にパソコンにバックアップデータは落とすようにしてある」
と言うと、梶は口笛を鳴らした。
「それならばっちりじゃん。でもお前のパソコンに?」
「まさか。それじゃ意味がないからね。バックアップは一番安全な場所に保管してある」
「安全な場所?」乃亜がちょっと探るように目を上げた。
「そ。安全で安心な場所♪」
それがまさか保健医のパソコンだとは思いも寄らないだろう。
ま、本人すら知らないことだしね。
それを二人に小声で伝えると、二人は目を丸めていた。