森本のお母さんは、一度は僕の話を信じてくれたようだが、それでも心のどこかでまだ疑いの気持ちが晴れていないのか始終しかめっ面を浮かべていた。


結局、話は平行線で―――


僕は一旦森本家を辞去することにした。


「それではまた伺います。予備校のこと、あまり叱らないでやってください。勉強するのも結局本人の意思ですから。


あまり躍起になると、本人のやる気が削げてしまう可能性もありますし」


「ええ…分かりました。とりあえず…エミナと話し合うつもりです」


玄関先で挨拶を交わし、


「じゃ、森本。また明日な」と笑顔を向けると、森本は恥ずかしそうにちょっと俯いた。


「…はい。先生……ありがとうございました」





―――何だかどっと疲れた…


数百メートル離れたコインパーキングに移動しながら、それでも角を曲がって森本家が見えなくなると、僕はすぐにネクタイをむしりとった。


一方通行な話し合いにはならなかったけど―――


それにしてもなぁ…


体を売ってるだとぉ!


確かに僕は雅と付き合っているが、裏で彼女の成績を上げたり、試験問題を教えたこともない。


まぁ確かに…あんまり勉強してるとは言い難いが…




雅と―――森本……



天才型と―――努力家……かぁ






どっちがいいとは一概に言えないけど、どっちにもそれぞれ違った悩みはあるんじゃないかな。