森本の話とは随分印象が違った。
華やかな顔立ちをしているけれど派手ではなく、男好きしそうな感じでもない。
どちらかと言うと―――
神秘的なところがあって……雰囲気が―――ちょっと雅に似ている。
「すみません。あの子無愛想で」
とお母さんが額に手をあて、眉を寄せた。
「いえ…お姉さんは今…」
「大学一年生です。受験に失敗して、滑り止めには何とか合格したんですけど…」
「受験だけが全てではないですから。もう少し気を抜いてリラックスしてさせてあげてください」
これじゃ堂々巡りだ。と心の中でため息を吐きながら…
いや。教師とはそうゆうものだ。と妙に納得している自分も居る。
根気良く…
僕が宥めるように言うと、お母さんはちらりと森本を見て、
「先生のお話は分かりました。ですがせめてこの子が学年一位になるまでは、当分の間がんばらせるつもりです」
「一位…」
「ええ。この子…一年の頃からいっつも一番にはなれなくて。
何でも毎回、鬼頭さんて子が決まって一位だそうじゃないですか」
お母さんは忌々しそうに宙を睨んだ。
その険しい視線が、さっきスヌーピーを睨んでいた森本とそっくりで…
やっぱり母娘だな―――と実感した。



