□Forest.2



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時計は夜の19時近くを指し示している。


「しまった。夕飯どきに失礼だったな……」


白いしっくいの三階建ての真新しい家の玄関で、今更ながら常識が僕の頭の中を巡る。


一応……森本の家に伺う旨は、彼女の母親に電話で伝えてはあったけど。


森本の母親は僕が担任だと名乗り、そして今から森本を連れて伺います、なんて切り出すとあからさまに怪訝な様子を見せた。


無理もないか。


担任を受け持つ教師は経験数も少なく、彼女の母親からすればほんの若造だ。


そんな男が何を話しにくるのだ、と言う態度がまざまざと見えた。


緊張しながらネクタイを直すと、


「…大丈夫です。うち夕飯遅いし…。それに全員揃って夕食なんてないですから」と森本が抑揚のない声を出して、おずおずと僕を見上げてきた。


「そうなの?お父さんとお姉さんは帰りが遅い?」そう聞くと、


「そうですね。お父さんは大抵10時ぐらいだし、姉は―――帰ってこないことも結構ある…」


そう答えが返ってきた。


そんな話をしていると、


ガチャッ


重々しい扉が内側から開いた。