乃亜の言葉に梶もゆっくりと頷いて同意した。





「一人でがんばろうとしないで?あたしたちが力になる。みんなで協力し合えば、


絶対大丈夫」






乃亜のあったかい言葉にふいに涙が出てきそうになった。でも涙腺を引き締めてあたしは乃亜を見つめ返した。


「だけど……」


「だけどじゃねぇよ。神代も知らないことなんだろ?だったらお前本当に独りじゃねぇか」


と梶がちょっと睨むようにあたしを見てきて、再びあたしの涙腺が緩んだ。


ホントは一人じゃ不安だった。


あたしは事件の概要すら思い出せない、いわばゼロからのスタートで……ううん、犯人は二年前と同じならば、マイナスからのスタートかもしれない。



「巻き込まれるからいやだ。なんて思ってたらこんなに真剣に話聞かねぇって」


梶が少しだけ声のトーンを大きくして言った。


「そうだよ、雅」乃亜も真剣だ。





大丈夫……


大丈夫―――



あたしは口を噤むと、滲んだ視界で二人を交互に捉えた。






「二人ともありがとう。そしてよろしくね」





あたしはぎこちなく二人に笑いかけながら、必死に涙を堪えた。


あたしにはこんなにもあたしを想ってくれてる人たちが居る。




―――彼らを守り抜かなければ。




愛する人を守りぬかなければ。





その夜二人にはそれぞれの家に帰ってもらった。


乃亜と梶は二人とも泊ると言い張ったが、あたしはそれを受け入れなかった。


戸締りをちゃんとすれば大丈夫だし、隣には楠家がある。ケータイも常に持っている状態だし、大丈夫だということを説明すると二人は渋々帰っていった。


二人が帰っていって急に静かになったうちは一人で住むには広すぎて、


それが余計に不安と寂しさを増長させた。