話し終えると二人は、


「あいつ…!久米っ!やっぱあいつが犯人だよ!!」と梶はいきり立ち、


「でも何の証拠もないんだよ?ただ近くに居ただけで犯人に仕立て上げるのはどうかと思うケド」と乃亜は冷静に返してきた。


「乃亜ちゃんはあいつが気に入ってるからだろ?何と言ってもクラスの王子さまだし?」と梶が拗ねたように口を尖らせる。


「あたしはまだ何とも言えないって言ってるの。ただの偶然かもしれないし、そうだったら失礼だよ。


それに久米くんが犯人だとしたら、外でうろうろしてた不審者はどう説明が付くの?」


と乃亜がちょっと怒ったように眉を吊り上げる。


梶もこれには「うーん…」と唸った。


乃亜の意見はもっともだ。ここまで話して乃亜が個人的感情を持ち込むとは思えないから、やっぱり今この段階で決め付けるのは早いってことか…


そのまま黙り込んでしまって、重い沈黙が流れた。


リビングボードに置いてある置時計の秒針が“かちこち”と音を立てて、そこだけ時間が流れているように思える。


もし時間を遡ることができるのであれば―――あたしは事件のあった二年前に戻りたい。


あのとき何があったのか。誰が関わっていたのか。


この目で確かめたい。


思い出さなければ。記憶を取り戻さなければ。




手遅レニナル




焦りだけがあたしを不快に満たし、考えを妨げる。


苛々と爪を噛みながら、それでもいいアイデアはこれと言って浮かんでこなかった。




やがて梶がちょっと姿勢をただし、咳払いんなんかして仰々しく手を挙げた。



「こうなったら久米に聞くしかないな……」