あたしの言葉に、乃亜と梶は二人顔を合わせて首を傾げている。


「久米くん?」


「あいつがどうしたんだよ。今関係ねぇじゃん」と梶は不満そうに顔を歪めている。


あたしは梶の言葉を無視して、再び乃亜に向き直った。


「ねぇ、その怪我した男と犯人どっちかが久米ってことはない?」


「は!?久米くん!」あたしの言葉に乃亜が目を丸める。


梶は意味が分からないというように腕を組んだ。


「ね、思い出して。そのどちらか久米じゃなかった?」もう一度聞くと、乃亜は目を開いたままゆるゆると首を横に振った。


「あたし…犯人や怪我した男の子のこと全然知らないの」


「じゃぁ質問を変える。当時あたしが仲良くしてた男子に久米は居なかった?」


この質問にも乃亜は首を捻った。


「さぁ…あたしは雅のクラスのことほとんど知らないから」


「なぁ、さっきから久米、久米って。もしかしてお前あいつと面識があるの?」と梶がようやくあたしの質問を理解したのか眉をひそめて身を乗り出した。


「覚えてないから聞いてるんじゃん。それにしてもあいつ、いつもタイミング良過ぎなんだよね。


何かとつけてあたしに絡んでくるし」


「「タイミング?」」と乃亜と梶の声が重なって、二人の視線があたしに注がれた。


これこそ言おうか言おまいか悩んでいたけど、ここまで聞いておいて今更しらばっくれるのはおかしい気がした。


何より二人が納得しないだろう。


あたしは手紙やメールが来ると、必ずあいつが近くに居ること…それから本来は右利きなのにそれを隠していることを二人に説明した。


“美術バカ”の話は言わなかったけれど、それでも二人はあたしの話に相槌を打ち、


目を開いて聞いてくれた。