2年前―――………?
乃亜は諦めたように吐息をつき、額に手をやると俯いた。
「あたしは良く知らないけど、雅がストーカーされてたのは事実」
「何で今まで黙ってたんだよ!」梶が声を荒げて勢い込む。
乃亜は熱くなった梶とは反対に冷え切った目をあたしに向けてきた。
「みんなで決めたことなの。雅のお父さん、お母さん、うちの両親、そして明良も―――。それぐらい雅にとってショックな出来事が起きて……忘れていたままの方が楽だろうって…」
あたしは乃亜を見据え返した。
「今なら何を言われてもショックを受けない。話して」
先を促すと、乃亜は小さく息を呑んで顎を引いた。その隣で同じように梶もごくりと息を飲む。
「あたしだってあんまり知らないけど、中学二年のとき、雅は近所に住む男に一方的に想いを寄せられてらしいの」
あたしは目を細めた。
「そいつの名前は?どこに住んでたの?」
あたしの問いに乃亜は小さくかぶりを振った。
「あたしは知らない。雅はそのときから不審な男に尾け狙われたり、変な手紙をもらったりして、ちょっと怖がってた。あたしと明良が最初に相談されて、その後雅のお父さんお母さんに話したら、二人ともやっぱり警察に相談しに行ったけど……」
「警察は何て?」
乃亜が小さく頷く。
「警察は悪質な悪戯だと思ったみたい。雅はその…」言い辛そうに乃亜が目だけを上げる。
「学校でも敵が多かったし、クラスメイトにもひがまれてたし?」
「そう言うこと……。こんな手紙が送られてくるのは、本人にも問題があるんじゃないかって、まともに取り合ってくれなかった」
「何だよそれ!警察は何をやってるんだよ!!」梶がいきりたって乱暴にコーヒーカップをテーブルに叩き付けた。



