『恥ずかしい写真!?お前俺の何を握ってるってんだよ!はっ!まさかあのときの…』


電話の向こうで保健医はあたふた。


“あのときの”って何だよ…あんた何やらかしたんだよ。


あたしはあんたの秘密なんて握ってないよ。でも人には誰しも秘密があるしね。


とりあえず今はこう言っておけば、保健医も余分なことはしないでしょ。


「じゃね。また学校で」


短く言ってあたしは一方的に通話を切ってやった。


保健医と電話をして、電話の受信機能に特に目だった変異は見られなかった。


と言うことは、盗聴器の類いもないってわけだ。


そして保健医の情報でもう一つ……


久米はやっぱりつき指なんかじゃなかった。


あいつはやっぱり右利きで―――怪我をしてから利き手を変えた。


でもあたしにはつき指だと言ってごまかした。





あいつはやっぱり―――あの“美術バカ”―――…?





勝手口のドアを開けると、乃亜と梶がすでに待ち構えていた。


「遅くなってごめん」二人を招き入れると、カーテンを閉め切ったリビングに通した。


「いいけど、一体どうしたって言うんだよ」


梶は何が何だか分からないと言うように勢い込んできた。


一方の乃亜は落ち着いていて、ソファに腰を降ろしている。


「雅の変な行動って、やっぱり今日出たって言う不審者に関係してるんでしょ?」


組んだ足の上で頬杖をついて乃亜が無表情に聞いてきた。


「不審者?お前が狙われてるのか?」梶がびっくりしたように目を開く。


あたしは二人を見てゆっくりと頷いた。