あたしが温度のない言葉で淡々と言い切ると、久米はちょっと驚いたように目を開いた。
だけどすぐに柔らかい笑みを浮かべると、
「勇ましいお姫様だ」と言って軽く手を挙げて、それでも颯爽と行ってしまった。
あたしは久米が角を曲がって姿が見えなくなるまで、その姿を追い、あいつの後ろ姿が見えなくなると、それでもキョロキョロと周りを警戒して家に入った。
パタン…
玄関の扉を閉めると、急に疲れがきた。
ため息を吐いてちょっとうな垂れていたけど、すぐに気を取り直して靴を脱いだ。
乃亜と梶を招き入れる為、あたしは家中の戸締りがしっかり出来てるか、異変はないかを調べることにした。
一階にはリビングとダイニングキッチン、バスルームにトイレと仏間があり、二階には今は使われてないあたしの両親の部屋とあたしの部屋がある。
どの部屋も三日前に帰ってきたときと少しも変わりなく、少し埃っぽかった。
あたしは自分の部屋だけ窓を開けるとちょっと空気の入れ替えをし、それからまたきっちりと締め切った。
再び一階に降りて郵便受けを見ると、手紙がたくさん届いていた。
その殆どがダイレクトメールや光熱費なんかの請求書。
イヤガラセの変な手紙の類いは―――入っていなかった。



