■Forest.1



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それは、まるで迷路のような



謎が入り組んだ森を手探りで歩いてるみたいだった。





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「劇の台本進んでる?」


久米と肩を並べながらあたしはちょっとこいつを見上げた。


乃亜と梶はあたしたちの後ろを大人しくついてくる。


梶は不服そうだけど、久米の間で二人はカップルってことになってるから、これが一番自然だと思う。


「何とかね。今、魔女が毒りんごを作ってるとこを書いてるところ」


「へぇ、おもしろそう。あたしって絶対白雪姫より魔女の役の方が合ってる気がするんだけど」


その答えに久米はちょっと笑った。


「鬼頭さんは、魔女に毒りんごをもらったらどうする?」


「どうするって、食べるのがストーリーでしょ?」


そう聞き返すと、


「もちろん。そうだけど、“鬼頭さんだったら”って言う設定でさ」


と久米はちょっと苦笑した。


「変なこと聞くね。まぁあたしだったらそんな得体の知れない婆さんからりんごもらっても食べないけどね」


「確かにそうだよね。俺でも食べないや。でもそれじゃ進まないからさ」


「そうだね…」あたしはちょっと考えて、久米を見上げた。


「あたしはおいしそうと思うよりも、まずその設定を疑うし。そんなおいしそうなりんごを貰ったら、色々考えるよ」