だけど、施設外の場所で暮らして初めて社会の厳しさを目の当たりにした時、山本の言葉の意味が分かった。


世の中理不尽なことばかり。


ましてや女の世界は学生のいじめなんか比べ物にならない。


帰る実家も頼る親もいない私は、我慢して堪えるしかない。


堪えるのは楽だった。


施設での生活を考えれば、まだ全然マシだと思えた。


多分、山本はそれを伝えたかったんだと思う。


親に捨てられて児童養護施設って言う特殊な環境で育った私に、施設を出た時自分1人で生きていけるように育てたんだと言いたかったんじゃないかな。


反抗しても何でも、施設から出たくないって思わせるより、自立を目標にさせたかったのかもしれない。


まあやり方は正解ではなかったと思うが、施設に帰りたいなんて弱音は1度も吐かなかったし、正解と言えば正解だったのだろう。


大人になって山本とお酒を飲んだ時、彼も彼なりに色々葛藤があったと話していた。


歳をとって丸くなったから過去の自分に言い訳してるだけなのかもしれないけれど、改めて謝られた時、私は素直に施設で育ったことに感謝できた。