歩いて

つきあいが長くなると、そういうことも考えるんだ。




あたりまえか。




でも、私はまだそんなつもりもないし、今の私に結婚なんてできない。




「…断ったの？」



知香は、恐る恐る聞いてきた。




きっと、知香はプロポーズをOKしたんだとおもいこんで電話してきたんだ。




「まだ、ちゃんとプロポーズされてない。ていうか、また今度するって」



「どういうこと？でも、まだ返事してないだけで、返事は決まってるんでしょ？」



「…うーん」



「えっ？迷ってたりするの？」



知香の驚いた声。



「迷うっていうか。いつかは勇太と結婚できたらいいと思うよ。
でも…」



まだ自分自身の気持ちも整理できていないのに、どうやって説明したらいいのかわからない。



「…まだ、あのことで悩んでるの？」



あのこと…、由亜のこと…。



「…うん…」



知香はしばらく何も言わない。



無言が続く。