歩いて

「藤野、席空いたって」



「わかった、先に行っといて」



直斗と一緒にいた人達は、店内に入っていく。



私は、その場に立ち尽くす。



どうしてこんなに胸がドキドキしているんだろ。



「レジの前に立っていたら、邪魔だから」



直斗はそう言い、私の腕をつかみ邪魔にならない位置につれていかれる。



あの頃となにもかわっていない。



直斗のまま。



「元気だった?」



「…うん」



どうしてか、直斗と目をあわすことができない。



由亜のお葬式以来。



あんな別れ方をしたから…。



「…噂で看護師になったって聞いたけど」



…。



あまり知られたくなかった。



「…うん」



「どこの病院?」



「N病院」


「…」


直斗の返事がないのでゆっくり顔を上げる。



直斗の表情が驚いているようにみえた。



「…そっかー。じゃ、元気で」


直斗はそう言い店内へ入っていった。



「…」



私は、直斗の背中をじっと見ていた。



胸のドキドキはとまらない。