歩いて

「…果菜、由亜になんか言ってやれよ。最期なんだから」



「…最期?」



最期って何?



「…由亜、早く起きて。直斗がおかしなこと言ってるよ」



「果菜、由亜はもう死んじゃったんだよ。早く楽にしてあげよう。今まで病気で苦しんできた。でも、もうそんなことで悩まなくていい。何も制限しなくてもよくなったんだよ」



何言ってるのよ。



死ぬってどういうことよ。



楽にしてあげるって何?



死ぬことが楽になること?



「…果菜」



布団がぽつぽつと濡れる。



あとからあとから。



何?



あっ、私泣いてるんだ…。



涙が由亜の布団に落ちる。



意識していないのにどんどん涙があふれる。



久しぶりの涙。




もう泣かないって決めたのに…。




弱いなー私…。



ねー由亜、そう思うでしょ。



私が、認めたら本当に由亜は逝っちゃいそう。



いいの?由亜。



色々話すことがあったんだよ。





「…由亜、…由亜」





私の静かな声が、病室に響く。