歩いて

打ち上げ花火が空を明るくする。



「きれい」



由亜が花火を見上げている。



白い肌が夜に吸い込まれそう。



私は、不意に由亜の腕をつかむ。



由亜は驚いた顔をみせた。



「ごめん」



私は、由亜の腕を離した。



由亜は、笑顔を見せる。




「もう遅いし、最後に線香花火でもしようか」



直斗がみんなに線香花火を渡していく。




私たちは、火をつけ小さな火花を静かに見守った。



小さな火の玉からチリチリと音をたてる。



4人の線香花火が、それぞれの形を見せる。



「なんか火が消えそう」



由亜の線香花火の火の玉が小さくなっていく。



その時、快斗の線香花火の火の玉が落ちた。



「快斗の負け。全員にジュースおごって」



「なんで、一番年上の直斗がおごるもんだろ」



「お兄様を呼び捨てにしない」


兄弟2人が口げんかをしている。



私は、線香花火えお水につけ、片付けを始める。



由亜は、2人を楽しそうに見てる。



私は、わかった。



快斗が、わざと線香花火を揺らして、火の玉を落としたのを…。



快斗がしなかったら、私がしていた。



由亜に悲しい思いをさせないために。