歩いて

頭の中が整理できないままいつのまにか病院に着いていた。



病室に入ると、そこに直斗の姿があった。



「直斗ー、久しぶり」


「久しぶり、元気そうだな」


「うん」


直斗はいつも変わらない。



いつも笑顔で、いつも冗談ばかりを言う。



私達の兄みたいな存在だった。



「大丈夫?由亜」


直斗は真顔になり由亜に話す。



…?



由亜の顔も暗い。



私が来る前に何か話していたんだ。



「…何かあった?」


私は恐る恐る直斗に聞く。



「うん…。果菜もいつかわかることだからな」



「…」


由亜はうなづく。



「快斗、結局その掛井実咲とつきあってるみたいで、だから最近由亜のところに来れないって」


えっ?



なんで?



好きでもない子とつきあってるの?



由亜が入院しているのに。



由亜の顔をみる。



表情が硬い。



わたしの視線に気づき、


「大丈夫だよ。いつかはこういう日がくると思ってたから。快斗もずっと私のそばにいてたらせっかくの高校生活を棒に振ることになるし。うん、よかったよ」


私には、由亜が自分自身に言い聞かせているように聞こえた。