歩いて

店内は、たくさんのお客の声でざわざわしていた。



「大丈夫そうだな」



突然、直斗は話す。



昨日のこと。



「…ごめん」


「俺は、謝らない。間違ったことをいってないから」


「…うん」


「由亜から、連絡あった?」


「ない。私もいれてない」


「そっかー。昨日、快斗と話したよ」


私はドキッとする。


「由亜がいじめられてたことを気づかなかったのが相当きつかったみたい。あまり言いたそうじゃなかったから久しぶりにしめてやった」


しめる?


「掛井実咲」


快斗とつきあう子の名前。



「由亜のクラスメートで由亜をいじめてた張本人」


いじめてた子とつきあうの?


「昨日、放課後掛井実咲に直接言いに行ったみたい。快斗にしたら思い切ったことしたよなー。いじめの理由が快斗のことが好きなんだって。それで、つきあってもない由亜といつも一緒にいるからいじめたんだって」


「そんな理由で?」


「その子にしたら、嫉妬でいじめたんだろうな」


「それでなんでつきあうの?」


「その子が、自分とつきあってくれるならいじめはやめるって」


…。


「何その理由」


「俺もばからしいって思ったけど、快斗は真剣だったんだろうな。その場でOKしちゃったみたい。自分が犠牲になれば由亜のいじめがなくなるって思ったんだろうな。由亜の気持ちも考えずに」


「本当にバカ」