歩いて

「果菜」



顔をあげると直斗が立っていた。



私は、はっとし、



「由亜は?」


「家まで送ってきた」


「大丈夫だった?かなり混乱した感じ。泣きじゃくってた」


「そうー…」


「なんで果菜まで泣いてるんだ?」


私は、急いで涙を拭う。


「快斗となにかあった?」


「なにもないよ。私、由亜の家にいってくる」


「今日は自分の気持ち落着けたいからそっとしてほしいんだって」


「…」


「いじめられてたこと。快斗が誰かと付き合うこと。辛いんだろうな」


「私、全然気づかなかった。それなのに、快斗にどうしてきづかなかったのって」


「それは快斗だって言われたくないことだと思うよ。現に快斗はずっと由亜のそばにいるのに。一番自分を責めて辛いのは快斗だと思うよ。それに、誰かとつきあうって今の状況で言うのはおかしい。きっとなにかあるんだよ」



考えてみれば直斗の言うとおり。



私は、その場の感情で快斗を責めていた。



「…私、自分がすごく恥ずかしい」



「それに、果菜は由亜から逃げたんだろ?今の果菜の立場で由亜のことを思っているっていうのはおかしいよ。一度背をむけた奴から責められる快斗の気持ちも考えてやれよ」



…。



「泣くな。辛いのは果菜じゃない」



わかってる。



いや、わかってない。



何もわかってない。



涙をこらえる。



あふれる涙を拭わない。



泣くことで逃げたりしない。



直斗は何も言わず、横にいてくれた。



あの時の気持ちに偽りはない。



由亜を守る気持ち。



まだ、私に由亜の隣を歩く資格がある?



私には、答えがわからない。



でも私は、進んでいかないといけない。