歩いて

部屋には快斗と私の2人だけになった。



快斗は大きく息を吐く。



そんな快斗を見ていると、怒り、悔しさ、愚かさ。



色々な感情が私に降りかかってきた。



「いつから知ってたの?いじめのこと」



私は静かに快斗の背中に話しかけた。



「…今日。いじめの現場を友達がみて教えてもらった」



快斗もこちらを見ずに答える。



「いつからいじめられてたの?」



「高校入学してすぐ」


「…」


そんな前から。


「なんでわからなかったの?」


「…」


「なんで由亜に言うの?なんでみんなの前で言うの?」


「俺だけがわるいのか?」



快斗は静かに答える。



振り返る快斗の顔は、今まで見たことのない冷たい顔をしていた。



「…」


私は、胸があつくなる。



「由亜が隠してことも、俺が気づかなかったこともすべて俺が悪いよ」



違う。




私は、快斗だけを責めているわけじゃない。




でも言葉がでない。




「果菜に俺の気持ちなんかわからない」



違う。



快斗とこんな言い合いをしたいわけじゃない。



どうしたらいいの?



快斗の目が怒りに満ちている。



「…由亜の気持ち考えてあげて」



やっと出た言葉。



私は、部屋を出た。