線香花火は火花が小さくなりながら、火の玉が膨らんできた。



「どっちが最後まで落ちないか勝負な」


「いいよ」


私と快斗は、静かに火の玉を見守る。



すると、快斗の火の玉がポツリと落ちた。


「やったー、私の勝ちね。
何おごってもらおうかな」


「そんなの聞いてない」


「言わなくてもそういう決まり。
快斗が初めに勝負って言ったから」


「なんだよー。
ていうか、俺が死にそうな時、果菜さー、今度ジュースおごってやるって言ってたのに、その約束まだなんだけど」


「知らない。
そんな約束忘れた。
でも、あんなに意識もうろうとしてたのにちゃんと聞いてたんだ」


「意識ははっきりしてたよ」


「でも、執念深いね。何年前の話よ。
もう、働いてるんだからジュースの一本くらいいいでしょ」



「その考えが腹立つ。
果菜がおごれ」


「絶対おごらない」


「そしたら、一人で帰れよ。車に乗せてやらない」


「直斗の車なのに、えらそうに」


「果菜ー。お前ってそんな女だったのか」


「お前っていうな」


私と快斗はしばらく、口げんかをしていた。




でも、この時間がとても楽しい。