歩いて

結婚式からしばらくが過ぎた。




私のまわりの環境も変わっていく。




季節は、もう夏。




あんなに嫌いだった夏が来た。




でも、今はもう何も思わない。




心がざわついたりしない。







私は、きちんとした格好をし、家を出る。






由亜の家の前。






由亜が亡くなって以来。






懐かしい思いが、私を包む。





由亜の思い出がいっぱいの家。





インターホンから、懐かしい声。





由亜の母親。




玄関で出迎えてくれる。






歳をとった感じがする。





由亜が亡くなってからの年月、由亜の母親も苦しんだはず。





想像もできない苦しみ。




「…果菜ちゃん、久しぶり。来てくれて、ありがとうね…」




目に涙が浮かんだのが見えた。





「…」




言葉を出そうとするが、出なかった。




のどの奥が熱くなるのがわかった。




「あがって」




母親に促され、私は、家にあがる。