歩いて

「俺の考え過ぎだと思うけど。果菜も快斗ももう少し楽になったらいいんじゃないか?今日みたいに友達と遊んだり、恋したり。由亜のこと忘れて騒いでもいいんじゃないか?由亜だってそう思ってるんじゃないか?」


「…」


直斗の言いたいことはわかる。



きっと由亜もそう思っているはず。



私も快斗もそうしようといい合わせたわけじゃない。



「果菜が由亜と快斗と違う高校に進学するって聞いて、驚いたけどそれがあたりまえなんだよな」


「私、成績よかったから」


「そうだったな」



直斗は笑っている。



「…嘘。私は、逃げたの。…なんか、疲れて」




直斗は、真顔でまっすぐ前を見ている。




初めて言った。




誰にも言わないでおこうと決めたこと。




言ってはいけないこと。




由亜には決して知られてはいけないこと。




どうしてか、直斗には言えた。




直斗は、大人だからか昔から相談にのってもらっていた。




「いいんじゃないか。ため込むといつか爆発する。ときには気晴らしもいるよ」


「そんな簡単なことじゃないよ」


私は、静かに笑う。



直斗が私の顔を見ている。



「あの日から由亜を守ることばかり考えてきた。もうあんな怖いおもいをしたくないの」


「由亜が倒れた時のことか?」


「…」


思い出すだけで体が震える。



「だから、逃げたの。由亜から」


「なにも果菜が責任に思うことはない」


「…」



それに、私は快斗のことを好きになった。



でも、由亜も快斗が好き。



このまま快斗と由亜のそばにずっといるのが辛かったから。



このことは、直斗にも言えない。



私の気持ちは誰にも言わない。