歩いて

「…ここで働いてるんだよね、直斗が言ってた」


「はい」


「…仕事、大変?」


「はい」



こんな話をするためにここに?



「…ごめんね。
もう少しこのままでいい?」



…?


「はい…」



「…さっき、主治医から説明があってね…、いつもそうだけど、なにかあった時の延命処置をどうするかって話…」



…。



大事な話しだけど、家族には辛い話。




自分には他人事だと思っていたことが、一瞬にして死を直面する。




「…快斗は、いやだっていうの。でも、私としてはどんな姿でも生きてほしい。
…それって私のエゴかしら…。
辛い思いをさせたくない…けど、生きてほしい。
快斗は自分らしく生きたいって。
快斗の意志を尊重したいけど、どうしても決断しきれない…」



「…」


何も返事をすることができなかった。




どう言葉をかけていいのかわからない。




看護師としてかけてあげられる言葉…。




私にはわからない。




みんなそれぞれの考えがあるから。




ただ聞くことしかできない。




そばで、聞くことしかできない。




自分の力のなさを実感する。