歩いて

その日の夜、快斗に電話してみた。



快斗は電話にすぐ出た。



「もしもし」


いつもの快斗の声。



「元気?」



「うん。なんで?」


「今日、直斗に会って…快斗が家に帰ってこないって聞いて」


「直斗、そんなこと果菜に言ったんだ…」



すごく迷惑そうな声。



どうしよう、私、余計なことをしたかも…。



「心配しすぎなんだから。
大丈夫だから。ただ、家に帰りたくなかっただけ」


「うん…」


「果菜にこんなこと言っても困るよな。心配かけてごめんな」


「うん…」


「直斗にはまた電話するから。
俺だって家族にずっと干渉されたくないよ。たまには、羽伸ばしたいよ。
それに、俺は今失恋したから心の傷を癒してるところ。
少し一人になりたかっただけだから」



「…」



やっぱり電話するべきじゃなかった。




人には見られたくない一面。




そっとしておいてほしかったはず。



「果菜にも、気持ちが落ち着いたら連絡するから」



快斗はそう言って電話を切った。






快斗の弱い所を垣間見た。