歩いて

本当に海に着いた。



もうあたりは暗くなっていた。



海も真っ暗。



誰もいない。



快斗は車から降りる。



私も、後部座席から降りる。




「タクシーみたいだな」


「急に乗せられたから」


「怒らない。せっかく海に来たんだから」



快斗は、砂浜を歩く。



私も、快斗の後ろを歩く。



すごく歩きにくいし、砂が靴に入る。



静かな砂浜に波の音がする。




「海に来たかったんだ」



突然、快斗が話す。



「みんなで海に行ったり、遊園地に行ったり、旅行に行ったりしたかった」



みんな?



直斗に私に…由亜のこと?



「それは無理だったけど、みんなといる時すごく楽しかった。
それだけでよかった」



私もそうだった。



4人でいると、とても楽しくて、このままずっとこうしていたいって思ってた。



「俺、この間果菜にいったこと本気だから」



前を歩いていた快斗は、突然振り向く。



…好きって言ったこと?



「由亜がいたから言えなかったけど、俺はずっと果菜のことが好きだった」



「…」


私の胸が大きく鼓動する。



「果菜に初めて会った時からずっと果菜のことを見てきた」


言わないと。


「待って。
私、つきあってる人がいるの」


私は、快斗の言葉を遮るように言った。



これ以上、快斗には何も言ってほしくなかったから。



「…でも、俺は果菜が好きだから」


「困る」


「好きだから」


「…」


「ごめん。でも、伝えたくて」


「…」