歩いて

私は、快斗のことを話さないとと思った。



「…勇太」


「ん?どうした?」


私は、大きく深呼吸し、


「今度ね、快斗と直斗と会うことになったの」


「…」


勇太は、久しぶりに聞く、名前を思い出しているようだった。


「…あの?」


思い出したようだった。




由亜のことがあって、勇太はきっとこの名前を何度も聞いていた。




でも、高校卒業後は私自身もこの名前を出さなかったし、勇太からも言うことはなかった。




「ごめんね、快斗が入院していて、この間退院したの。そのお祝いしようって」



「入院って、果菜の勤めてる病院?」



「うん」



勇太の声が段々真剣になる。



「…そしたら、何度も会ってたの?」


「違う。入院中偶然に一度だけ。
快斗が病気だっていうのもその時初めて知ったの」



「…」


勇太が今どんな顔をして、今何を思っているか全然わからない。



勇太の沈黙が怖い。



「…勇太?」



恐る恐る勇太の名前を呼ぶ。



「うん…。
果菜は大丈夫?」




「うん」



「そっか。またその日が決まったら教えて。
それじゃー」


「うん」


電話が切れた。



「…」