歩いて

「…」





快斗…。





快斗は、あの日と同じように木を見上げていた。





「…」




息をのんだ。





快斗も私に気づき、こっちをずっと見ている。





そして、少し微笑み、手をあげた。





「…」





私も、快斗に手を挙げた。





ほんの少しの時間だった。





でも、私にはとても長く感じた。





快斗は、そのまま中庭を出た。





私は、しばらくそのまま…。





風で揺れる木を見ていた。