歩いて

私は、一呼吸おいた。




「…藤野快斗ってわかる?」



遥に、聞いた。



遥は、不思議そうな顔をむけた。



あたりまえか。



「血液内科で入院中の?」



「うん」


「知り合い?」


「うん、幼なじみ。
でも、全然会ってなくて、この間偶然中庭で会って」


「そうなんだ。
明日、退院かな」


「ふーん。
どうなの?」


「ん?病気のこと?」


「う、うん」


「いいんじゃないかなー。
順調に進んでると思う。けど、不思議な人だね。
…ごめん。幼なじみなのに」


「ううん。聞きたい。教えて」


「…うん。
なんか、感情に乏しいって思った。命に関わる病気になって、私達にはわからない、悟りみたいな境地なのかなーって思うけど。最後までよくわからなかった」



やっぱり直斗の言うとおりなのかな…。




快斗は、自分だけ治ることに罪悪感を持っている?




快斗は、そのことを自分で意識している?



それとも、自然とそうなっているの?