歩いて

しばらく沈黙が続いた。



遥は、泣くこともなく、ただテーブルに置かれたコップを見つめていた。




コップの表面にたくさんの水滴がついている。




その水滴を見つめる。







「…ごめん。ありがとう」



遥のいつもの笑顔が戻った。




遥は、前に歩き出したんだ。




「うん」




遥に、なにも言葉をかけなかった。




私は、遥の今までをなにも知らない。




月並みな励ましや、共感の言葉ならいくらでも出てくる。




でも、それを遥に言うことができない。




それは、なんの支えにもならないから。




私にできるのは、見守るだけ。




遥のそばにいることだけ。