歩いて

私は、ふと思ったことを遥に聞いてみた。



「前に勤めていた病院、どうして辞めたの?」


遥の手が一瞬とまった。



まずいこと聞いたかも…。



遥は、すぐに笑顔になり、



「…職場の人と不倫してたの」



「…」


遥の顔をぐっと見た。



まさか、自分のよく知る人が不倫をしていたということに驚いた。



学生の頃の遥を考えると、不倫とは無縁な部類の人。



遥は自嘲し、



「驚いたでしょ、私はそんなこと絶対にしないって自信があったけど…。
若かったからねー。好きになったらその人に奥さんがいようと子供がいようとも、恋に走っちゃった…」



不倫はいけないってわかる。



でも、本人が一番わかっている。



「でも、もう終わったから。
自分でも、この恋にゴールはないってわかってるから。
…いつかは、決着つけないといけないってわかっているから…」



遥の目が潤んでいるのがわかった。




遥は、自分で終わらせたんだ。




でも、まだ相手に対して気持ちが残っているんだ。




その気持ちに終止符をうつために、環境を変え、前に進もうとしている。




「…ごめんね。こんな話しつまらないよね…」



「…ううん」


「…ありがとう。…誰かに聞いてもらいたかったから。…少し、楽になった」