歩いて

「同じ病院だからわかるよな」



「…」




何も返事することができなかった。




「今回も抗がん剤の入院」



…知っている。



直斗は話続ける。



「薬が快斗に合ったみたいで、いい方向に向いている。俺も家族も喜んでるけど、快斗はあんまり喜んでないけどな」



「…」



えっ?



喜んでないって…。



治ることがどんなに嬉しいことか。



薬が合って改善していることがどんなに勇気づけられることか。



看護師をして、その心情の変化を身近でみてきた。



患者さんの一喜一憂を目の当たりにしてきた。



「…わからないよな。あいつの気持ち。一度、あいつの心の中をのぞきたいよ」




「…」



「…きっと由亜に悪いと思ってるんだろうな」



「…」



「自分だけ治るってことに罪悪感を持っているんだろうな」



「…」