「ただいま」

私は誰もいない部屋に自分の声を響かす

この暮らしにもだいぶなれたんだけどね

幼い頃両親がケンカしてお父さんが出て行った

お母さんは泣いてる私の隣で自分も泣きながらもずっとそばにいてくれたけど

朝になって目を覚ましたら

お母さんはどこにもいなかった

いわゆる捨てられた子供

いまどこで何をして生きているのか分からない

私のことなんて忘れて

新しい家族を作ってるのかもしれない

最初のころはそりゃあ寂しかった

どうしたらいいか分からなかった

なにもできなかったから

でもたまたまその日親戚のおばさんが私の家を訪ねてきて

泣き叫ぶ私に手を差し伸べてくれた

おばさんにも仕事があるから一緒には住めなかったけど

お金をおばさんは毎月親切に振り込みしてくれた

今はバイトができる年だけどまだまだ学生のバイトでは生活費や授業料は払えない

だから情けない話だけどまだ何万か振り込んでもらってる

本当は部活なんてしないで働こうかと悩んだ

なんとなくで入るだけならって

でもおばさんが入りなさいっていってくれて

演劇部に入った

そして部活の時間が大好きな時間になった

おばさんには誰よりも感謝してる

だから寂しくなんかない

そんな昔のことを思い出しながら私は窓から夜の星を眺めた